今回は、製造業DXを実現するための「施策実行の７ステップ」の６ステップ目にあたる製造業DXの移行について、詳しく説明します。
DXやシステム刷新プロジェクトにおいて、「移行」は単なるデータの引っ越しではありません。
旧環境から新環境へと業務やシステムを安全かつ確実に切り替えるための、とても重要なフェーズです。
この記事では、移行計画書の役割と、移行フローの設計方法を詳しく解説します。
移行計画書：関係者の合意形成と安心の土台
移行計画書は、プロジェクト関係者全員が「何を、いつ、どうやって移行するのか」を共有・合意するための非常に重要な成果物です。
これが曖昧なまま進行すると、以下のようなリスクが顕在化します。
- 業務部門との認識齟齬
- 移行タイミングのズレによる業務停止
- データ欠損や整合性の問題
そのため、移行計画書には以下の要素を明確に記載する必要があります。
この計画書があることで、関係者は安心して移行に臨むことができ、万が一のトラブルにも迅速に対応できます。
移行フローの定義：リスクを最小限に、成果を最大化
移行は「やってみてから考える」では通用しません。事前に移行フローを定義し、段階的かつ計画的に進めることが重要です。
一般的には以下のような流れになります。
移行手順書と切戻し手順書を作成し、バックアップ取得、移行対象の最終確認を行います。
移行手順書に従い、検証環境での移行試行を行います。移行にかかった時間も測定しておきます。また、必要に応じて移行手順書を修正します。
本番環境への移行を時間を測定しながら行います。
移行後のデータ・機能の整合性チェックを行い、予定時間内に完了可能と判断された時点で、稼働判定OKとする。
予定時間内に完了しなかった場合、時間延長で対応できるかの判断を行い、延長時間内に作業ができるのであれば延長を検討する。
問題発生等で稼働判定OKとならなかった場合、切戻し手順書に従い、切戻しを行う。
このように、移行フローを明確に定義することで、関係者全員が同じ認識で移行作業に臨むことができ、結果としてスムーズな移行が実現します。
まとめ
移行は、単なる技術的な作業ではなく、関係者の合意形成と計画的な設計が求められるとても重要なフェーズです。
そのため、移行計画書と移行フローの整備は、プロジェクト成功のための不可欠なステップです。
戦略的かつ丁寧な設計を重視する姿勢が、DX推進の現場で大きな信頼と成果を生み出します。
